オーケストラ!
重厚なドラマ 迫力ある演奏
旧ソ連時代の1980年、ユダヤ人排斥運動により、ボリショイ交響楽団の団員たちの多くが連行され、職を失った。パリの劇場で団員を募集していることを知った元天才指揮者のアンドレイはある計画を実行に移す。
その後の出国にまつわるドタバタは「喜劇か」と思わせられるが、オーケストラ演奏の瞬間から「悲劇」の真実が解き明かされて重厚なドラマへと展開していく。
若く美しいバイオリニスト、アンヌ・マリーにはクエンティン・タランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」で注目されたメラニー・ロラン。監督はルーマニアからフランスに亡命した経歴を持つラデュ・ミヘイレアニュ。
政治や民族に翻弄されながらも音楽を愛する団員たちの物語であるが、この映画の主役は何といっても「チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲」だろう。オーケストラの迫力ある演奏の感動をぜひ映画館で味わっていただきたい。(2010年7月29日・林田)