息もできない
肉親の絆に気づく主人公
主人公サンフンは借金の取り立て屋。彼の非情さは幼いころに父親の暴力によって母と妹を亡くした心の傷によるものだ。彼は同じように家族に問題を抱えている高校生ヨニと出会い、次第に肉親に対する素直な感情に気づいていく。
最初から最後まで、まさに「息もできない」暴力シーンの連続で観客に苦痛を強いる作品ではある。主演で製作・脚本・監督・編集の5役を務めたヤン・イクチュンが気持ちをストレートにぶつけているからだろう。彼は初の長編映画で今まで抱えてきた家族への思いを吐き出したそうだ。
救いは主人公のいら立ちの原因が理解できることだ。意味もなく人が人を殺す物語が多い昨今、家族へのいら立ちを持て余し、悪態をつき暴れる主人公には共感できる。ただ、力の強いものが弱いものに向ける暴力は許してはいけない。とても重い内容だが、肉親との絆を考えるきっかけになる作品ではないか。(2010年8月26日・手塚)