悪人
孤独な男女の不器用な激情
芥川賞作家・吉田修一の同名ベストセラーの映画化。監督は「フラガール」の李相日。
解体作業員の祐一(妻夫木聡)は仕事と年老いた祖父母の面倒を見るだけの孤独な日々を過ごしていた。ある日、出会い系サイトで知り合った佳乃とトラブルになり殺害してしまう。警察の手が伸びるころ、祐一は光代(深津絵里)と出会う。
他人を見下すことで自分の価値を見いだすかのような風潮の中、巡り会った孤独な男女。互いの心の空白を埋め合うかのように不器用で切ない激情が強い輝きを放つ。
同時に映画は事件を取り巻く人々の日常を通し、それぞれの心の動きを描き出す。何が善で何が悪なのか。多様化した現代においては価値観がはんらんし、答えを出すのは容易ではない。
満島ひかり、岡田将生、樹木希林、柄本明など、若手からベテランまで、秀逸な役づくりだ。深津絵里はモントリオール映画祭で最優秀女優賞を受賞した。(2010年9月23日・のだ)