幸福の黄色いハンカチ
素直に心に訴える物語
1977年に公開された山田洋次監督作品のデジタルリマスター版。最近の映画全般、物語や演出に凝りすぎの作品が多いように感じていたが、この往年の名作は一服の清涼剤のよう。
自分の愚かさから殺人を犯した勇作(高倉健)は出所すると同時に妻(倍賞千恵子)にハガキを出す。「もしまだ一人で待っていてくれるなら、黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ」。網走から妻のいる夕張まで、勇作と若者二人との旅がはじまる。
軽薄な欽也(武田鉄矢)や朱美(桃井かおり)が自分自身と必死に向き合おうとする勇作に引き込まれ、変化していく。自分と他人とを比較して考える彼らの姿は現代の若者にも通じる。
有名なラストシーンは見る人の年齢によって感動の意味も違ってくるだろう。同じなのは「おかえり」という言葉の温かさ。単純だからこそ素直に心に訴える物語。この作品に再び出会えて良かった。(2010年10月7日・手塚)