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シネマ1987online

おとうと

家族のきずなラストに凝縮

映画は不思議なもので、一シーンでも心に残る場面があれば、「この作品は良かった」と言えるもの。家族を題材にした山田洋次監督の最新作は、そんな作品だった。

人に迷惑ばかり掛けている弟に憤りながらも肉親の情を捨てられない姉。弟が周りに誇れるのは美しく成長しためいの名付け親だということ。そのめいからも結婚式を台無しにした、と嫌われる。姉役は吉永小百合。弟は笑福亭鶴瓶。姉の娘に蒼井優。似つかないふたりだが、不思議と姉弟に見えてくる。

現代劇なのに、せりふや演出に古さを感じ、少々突っ込みどころもあるなど残念なところはある。しかし祖母役の加藤治子との親子三代のラストシーンで、不満が払しょくされる。秀作が多い近年の邦画の中でも「家族のきずな」をワンシーンにあれほど凝縮し、表現した作品は思い当たらない。どんなに疎んでも、家族だからいとおしいと、気付かせてくれる。(2010年1月28日・手塚)

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