武士の家計簿
ユーモア交え現代人に警鐘
時代劇といえど、刀で戦う場面は一切ない。しかし武士としての気品、立ち居振る舞いや言葉の美しさなど時代劇としての重厚さは伝わってくる。幕末から明治へかけて日本が大きく変わった時代に加賀藩の御算用者(経理係)だった猪山家の三代にわたる実話を基に作られた物語である。
主人公は八代目御算用者の猪山直之。実直で真面目でそろばんばかと言われながらも、帳尻を合わせてごまかす事のできない性分である。借金を返すために家財道具を売り払い、せっせと家計簿も付ける直之を堺雅人が好演している。その妻に仲間由紀恵、両親に中村雅俊と松坂慶子、祖母に草笛光子と役者がそろって、地味な時代劇をもり立てる。
監督は「家族ゲーム」「わたし出すわ」などの森田芳光。安易に借金を重ね、破産宣告に陥る現代人への警鐘であり、生き延びる知恵と力を、ユーモアとともに与えてくれる作品といえるだろう。(2010年12月23日・林田)