正義のゆくえ I.C.E特別捜査官
傷つけられる移民たちの姿
ロサンゼルスには、さまざまな国の人々が希望を持ってやってくる。移民税関捜査局(I.C.E)のベテラン捜査官ハリソン・フォードを中心に、米国の正義や自由を問う骨太の作品。
両親をメキシコに残し、息子と不法入国した女。グリーンカードを得るために宗教関係者と偽る若者や、移民判定官に身体を強要される女優の卵。テロリストと同一視されるイスラム教徒の少女。帰化することに疑問を抱く韓国人少年。強者の論理や差別に傷つけられる彼らは、正義のありかをどこに見るだろう。
外国人の永住権や強制送還の話題は米国だけのことではない。この作品が、そこから見える貧富の差やパワーハラスメント、人種差別を考えるきっかけになればと思う。
豊かな国へ希望を持って来た者に果たしてその国は、住む人は、応えられているのだろうか。強制送還される少女の瞳に宿る思いが、いつか報われることを願う。(2010年3月4日・手塚)