あしたのジョー

漫画実写化でまれな成功作

中高年齢層に熱狂的支持者を持つ漫画を実写映画化。近年、今回のような成功作はまれではないか。「ピンポン」の曽利文彦監督。山下智久、伊勢谷友介主演。

夕暮れ時の工場の煙突。薄暗いドヤ街にうごめく人々。冷たい雨、街かどにうずくまるジョー。60年代高度経済成長期の繁栄と、それに取り残された人々との対比が見事にスクリーンに広がる。混沌(こんとん)とした時代に現れた野良犬のような少年がジョーだ。元トレーナーの段平(香川照之)は彼に才能を見いだし、ボクシングではい上がろうと誘う。

作品の見どころはボクシングシーン。迫力あるリアルさには手に汗握る。ボクサーの身体につくりあげた出演者たちにも拍手。原作ファンが満足するのに十分すぎる演出も物語の流れも申し分ない。今のような時代だからこそ「あした(未来)」を泥くさく目指し、生きる彼らの姿をしっかりと感じ、この目に焼き付けたい。(2011年3月10日・手塚)