エリックを探して

揺るぎがない弱者への視線

郵便配達員のエリック(スティーヴ・エヴェッツ)はパニック障害で失敗続きの人生。2度目の妻は7年前に出て行き、息子2人は手に負えない10代。生活に疲れながらも、最初の妻リリー(ステファニー・ビショップ)を忘れられない。

ある日、彼のベッドルームにあこがれのサッカー選手エリック・カントナが現れる。「チャンスはどんな時にもある。ひげをそってリリーに会いに行け」。カントナのアドバイスを忠実に実行していくエリック。仲間たちは温かい友情で一致団結、共に危機を打開していく。

サッカーも人生も同じ、仲間の美しいパスから完璧なゴールが決まる。ドタバタが単なるコメディーに終わらないのは、やはり社会派監督「麦の穂をゆらす風」のケン・ローチ。社会の弱者に目を向ける根幹に揺るぎがない。従来とは趣の違う、愛と友情と笑いにあふれた初のハッピーエンドに感動してほしい。(2011年3月17日・杉尾久)