冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
巧みな設定と活劇の面白さ
「エグザイル 絆」(2009年)で高い評価を得たジョニー・トー監督の新作。香港・フランス合作のハードボイルド・アクションである。
マカオで暮らす娘一家が何者かに銃殺される惨事が起きる。フランスに住む父親で元殺し屋のコステロ(ジョニー・アリディ)は復讐(ふくしゅう)を決意し、3人の殺し屋に仕事を依頼する。かくて男たちの悲壮な闘いの口火が切って落とされる。
コステロが頭の中に残る銃弾のために、記憶が徐々に失われていく設定が巧みだ。紙くずの舞うごみ捨て場や朽ちたアパートなど、背後の風景も相まって悲しい情感を醸し出している。映像技術的にはスローモーション映像や複雑な時制の編集など、やりたい放題。アクションの盛り上げ方はサム・ペキンパーの全盛期をほうふつさせる。
長ったらしいタイトルに顔をしかめて敬遠するなかれ。活劇のだいご味が味わえる傑作である。(2011年4月14日・小野)