冬の小鳥
心を揺さぶるセロンの演技
9歳のジニ(キム・セロン)は父に見捨てられ児童養護施設に入る。父が必ず迎えに来ることを信じて疑わないジニは不条理な現実に必死で抵抗する。唯一心通わせた年上の友スッキ(パク・ドヨン)も里親の元へと去っていく。絶望と悲嘆に暮れる少女が痛々しいまでの方法で内省し、再生へと踏み出していく姿に胸を締め付けられる。
物語は背景の説明を最小限に抑え、孤独と不安に耐え抜く少女の目線で淡々と語られる。施設は決して暗く冷たい雰囲気ではない。ジニを取り巻く人たちはそれぞれ過酷な境遇にもかかわらず、皆とても温かで優しい。その希望を失わない無邪気さに救われる。
キム・セロンの精彩を放つ演技は多くの観客の心を揺さぶるだろう。旅立ちの時、記念撮影のカメラの前でほほ笑む少女の目に生きることへとつながる未来は輝いて見えたと信じたい。監督は自らも同じ体験を持つ韓国出身のウニー・ルコント。(2011年1月13日・杉尾久)