ブラック・スワン
幻想と現実を独特の映像で
米アカデミー賞主演女優賞受賞作。監督は「レスラー」のダーレン・アロノフスキー。
バレリーナのニナ(ナタリー・ポートマン)は念願の「白鳥の湖」の主役を手にする。だが純真な白鳥は見事に踊れるものの、邪悪な黒鳥を踊るには表現力不足と、芸術監督に指摘され、不安に陥る。彼女は徐々に精神のバランスを崩し、リリー(ミラ・クニス)に役を取られるのではとの強迫観念も増していく。果たして公演の舞台ではうまく踊れるのか。
役を巡る女性同士の競争意識を描くところは「イヴの総て」の延長線上にあるが、ヒロインの危うい精神状態を映し出した独特の映像美が見ものだ。幻想と現実をつき混ぜ、けれん味たっぷりであやしい魅力を放つ。
ナタリー・ポートマンもかれんで妖艶な姿を見せていく主人公を名演。その演技はラストのせりふではないが、まさに「完璧」だ。彼女の演技に酔いしれる映画である。(2011年5月26日・小野)