小川の辺

殺陣にすごみ　東山紀之好演

藤沢周平原作の東映8本目の映画化作品。同じ藤沢原作の「山桜」でもコンビを組んだ主演の東山紀之と篠原哲雄監督が再び組んでいる。

海坂藩の戌井朔之助(東山紀之)は抜きんでた剣の腕を買われ、脱藩した佐久間森衛(片岡愛之助)を討てと藩から命じられる。佐久間は旧友で剣の好敵手。妹田鶴(菊地凜子)の夫でもあり正義感が強く、藩の農政改革を、藩主を前に批判して不興を買い、居場所をなくしたのだ。武士の義理を通すべく朔之助は家僕の新蔵(勝地涼)を従え、旧友を討つ旅に出る。

ロケ地、山形の風景がいい。主演の東山の殺陣にすごみがあり、所作も見事で品がある。ただ、田鶴役の菊地凜子がミスキャスト。顔が大きく押し出しの強い彼女では、繊細な新蔵がひそかに慕い続けるリアリティーが感じられない。

だがそれは小さな傷。風景と、人の思いの美しさに心が洗われるような佳作である。(2011年7月14日・小野)