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シネマ1987online

大鹿村騒動記

歌舞伎めぐる村人たち描く

「どついたるねん」の阪本順治監督作。長野県大鹿村で300年続いている大鹿歌舞伎。今年もその季節がやってきた。そんな時、村で食堂を営む善(原田芳雄)のもとに18年前に駆け落ちした妻(大楠道代)と治(岸辺一徳)が帰ってきた。

作品中にはさまざまな事象が登場する。山村の過疎・高齢化、公共工事の誘致、在宅介護から性同一性障害まで。村人は何か問題が起きそうになると、歌舞伎に障らないよう手打ちする。すると何となく平和になる。誰もが何より歌舞伎が好きで心のよりどころになっている。「ここには何もないけど歌舞伎がある」。歌舞伎は人々を支えているからこそ、大切に守られてきた。

原田芳雄の遺作になった本作は笑いの中に年を重ねることの素晴らしさをしみじみと感じさせる。無頼漢のように見えた彼が最後に選んだ作品は時が過ぎ、人と人とが穏やかに許し合う姿を描いた温かい物語だった。(2011年7月28日・手塚)

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