コクリコ坂から
誠実な生き方 胸を打つ場面
今や国民的アニメとなったスタジオジブリの新作。「ゲド戦記」以来となる宮崎吾朗の監督作品である。
1963年の横浜が舞台で、父親を海で亡くした高校生、海(長澤まさみ)が主人公。母親の営む下宿の仕事を手伝う海は庭で信号旗を揚げるのを日課にしている。ある日、船から返礼の旗が揚がる。同じ高校に通う俊(岡田准一)が行ったものだった。俊は建物取り壊しの反対運動にいちずで、海は恋心を抱き、相思相愛となる。だが二人は実の兄妹ではという疑いが持ち上がる。寮の存続は、そして二人の恋の行方はどうなるのか。
どうあろうと「あなたが好き」と俊に告げる海。出生の真実を知るために二人が港へと急ぐ場面は胸を打つ。時代の変化の波が押し寄せようと、人の心のありようはたやすく変わるものなのか。誠実な登場人物たちの生き方がさわやかで、私たちが今を生きるヒントにもなる一作である。(2011年8月11日・小野)