ヒアアフター

生に向き合う3人のドラマ

タイトルは「来世」のこと。クリント・イーストウッド監督の最新作は死後の世界を扱ったものである。

東南アジアで大津波が発生する。フランスから休暇に来ていたジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は大波にのみ込まれ、水中で臨死体験をする。サンフランシスコでは霊能力者のジョージ(マット・デイモン)が死者との対話に疲れ、工場で働く日々を送っていた。またロンドンでは双子の兄を亡くした少年が再会の日を待ち望んでいた。3人の人生はどうなるのか。

三者三様の人生が交錯していく話術がうまい。死を間近に体験した3人が悩みながらも「生」に真摯(しんし)に向き合っていく姿が感動的だ。超常現象を材にしながらも、深みのある人間ドラマになっている。

もうイーストウッドは、どんな題材でも傑作にしてしまう大巨匠になったようだ。名演出にあらためて驚嘆する逸品である。(2011年2月24日・小野)