メランコリア
地球の終わり 人々を淡々と
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督作品。巨大惑星が地球にぶつかるまでのある家族の人間ドラマをハイスピードカメラや独特の手持ちカメラの映像で幻想的に描く。地球の終わりをテーマにしながらパニック映画ではなく、事実を受け入れる者、あらがおうとする者、嘆き悲しむ者の姿を淡々と映し出す。
映画は抽象画のように映像の意味を観客の感覚に訴える。盛大な結婚披露宴でたった一人、惑星の脅威を感じ情緒不安定な花嫁(キルスティン・ダンスト)。その行動は、急速に進歩を遂げる現代でも、人間は動物と同じ自然の一部だと感じさせる。生と死の本能を感じ取る原始的な感性に気付くことが、実はどんな進歩よりも新しいのかもしれない。
冒頭の超スローモーションが美しい。印象的なシーンの連続は膨大な時の流れに住む人間の存在を表しているようだ。ダンストはカンヌ映画祭主演女優賞を受賞。(2012年3月15日・手塚)