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懸命な父の姿 再生する家族
東京から岩手へ引っ越してきた高橋一家。父・晃一(水谷豊)は家族を喜ばせようと遠野の古民家を借りるが、田舎暮らしに妻(安田成美)も子どもたちも戸惑う。同居する祖母(草笛光子)は認知症の兆候が現れ、家には何かが住んでいた。
初夏の遠野は緑が美しい。そこは自然と人間とが共存してきた場所。都会でそれぞれ心に傷を負い、お互い話せずにいた高橋家の人々は、何も言わずにそこに住んでいる座敷わらしに気付く。たわいもないいたずらに驚きながら次第にほほ笑ましく感じていく。姿は見えないが、自分たちが守る6人目の家族として受け入れた時、懸命に家族を守ろうとしている父の姿にも気付く。その姿はバラバラだった家族の心を優しくとかしていく。
「自然」という見えない命がいつでも私たちに寄り添っている。それは近すぎて愛されていることに気付かない家族のように。原作は荻原浩、監督は「相棒」シリーズの和泉聖治。(2012年4月26日・手塚)