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シネマ1987online

別離

嘘と秘密から連鎖する悲劇

昨年、宮崎でも公開されたベルリン映画祭監督賞受賞のイラン映画「彼女が消えた浜辺」はスリリングな会話劇の秀逸さに驚かされた。その監督アスガー・ファルハディの新作は前作以上に緊張感があふれる。ミステリーのように緻密に構成された脚本と巧みな演出にうなった。

離婚の危機を迎えた夫婦(ペイマン・モアディ、レイラ・ハタミ)と娘、父の介護のために雇われた家政婦(サレー・バヤト)とその夫のささいな嘘と秘密が悲劇の連鎖を生み出す。映画はイランを根強く支配している信仰や厳しい戒律を含めた社会構造を背景に、人間の利害関係と嘘の背後にある真実をあぶり出していく。夫婦とは、男女とは、という普遍的な人間の心の問題に鋭く迫る作品だ。

第61回ベルリン映画祭で史上初の主要3部門独占を果たし、アカデミー賞では外国語映画賞を受賞、脚本賞にもノミネートされた。本年を代表する秀作である。(2012年5月10日・笹原)

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