崖っぷちの男
裏をかく展開 緊張感が持続
高層ホテルの21階で食事を済ませたニック(サム・ワーシントン)は窓枠を乗り越えビルの側壁に立つ。眼下では今にも飛び降りそうな彼を見上げて人々が騒ぎだす。
冒頭の身のすくむような緊張感はラストまで見る者をとらえて放さない。ニックはダイヤを盗んだ罪で服役中の元警官。無実の証拠を手に入れるために脱獄し、仲間と共に緻密で壮大な作戦を練っていたのだ。
死と隣り合わせの状態で次々に計画が遂行されていく。追い詰められた立場で迫り来る時間、あおるように鳴り響く音楽。アドレナリン全開の興奮は「ミッション:インポッシブル」を思い起こさせる。アクションと裏をかく展開の鮮やかさに胸が躍り、高揚する気持ちを抑えられない。
果たして、ニックは人生の崖っぷちから生還できるのか。巧妙に仕組まれた物語とジェットコースターばりの迫力がある映画だ。監督はこれが初の劇場映画となるアスガー・レス。(2012年7月26日・杉尾久)