鍵泥棒のメソッド
巧妙な伏線で奇想天外な展開
複雑な構成と巧妙な伏線が持ち味の内田けんじ監督作品。今回も期待を裏切らない。
こわもてで冷徹な殺し屋(香川照之)と売れない貧乏役者(堺雅人)の人生がひょんなことから入れ替わってしまう。何事にも詰めが甘く、計画性のない人間が殺し屋という危うい立場に立たされ、緻密で完璧な仕事がモットーの人間が情けない人生に放り込まれる。2人の行動がコミカルに描かれ、これに婚活中の女(広末涼子)が絡んでくる。
内田監督の過去の作品「運命じゃない人」「アフタースクール」ほどの複雑さはないが、凝った細部や伏線はこれまで通りだ。奇想天外な展開に興奮し、絶体絶命の窮地をどう切り抜けるのかワクワクする。
いつも個性的でとぼけた役が多い荒川良々が今回はニコリともしないヤクザ役で存在感を出している。見終わると、爽やかな空気を吸うような希望が湧いてくる映画だ。(2012年9月27日・杉尾久)