カラスの親指
道尾秀介原作 後味に爽快さ
プロの詐欺師タケ(阿部寛)と、初老の詐欺師テツ(村上ショージ)の家に、街で偶然知り合った少女まひろ(能年玲奈)とその姉やひろ(石原さとみ)、さらにその彼氏の貫太郎(小柳友)が転がり込んでくる。5人は家族のような共同生活を始めるが、その生活は、タケを執拗に追うやくざたちによって、あっけなく壊されてしまう。追い詰められた5人は逆にやくざを陥れるための大きな詐欺に打って出る。
原作は「月と蟹」で直木賞に輝いた道尾秀介のベストセラー。映画は2時間40分と長丁場だが、長さを感じずに没頭できる。原作の良さを生かした脚本と編集がうまいからだろう。
詐欺のいろいろなテクニックが堪能できるのもこの作品の魅力。映画の各所に配置されているさまざまな伏線が明らかになるラストでほろりとさせられ、人情ドラマとしても優れている。後味の爽快さも良い。監督は伊藤匡史。(2012年12月6日・酒井)