あの日 あの時 愛の記憶
戦時下の別れ よみがえる恋
1944年のポーランド、ハンナ(アリス・ドワイヤー)とトマシュ(マテウス・ダミエッキ)は強制収容所で恋に落ちた。2人は命がけの脱走に成功するが、お互いが死んだと思わされ、生き別れてしまう。32年後、ニューヨークで暮らすハンナはある日、テレビから流れるトマシュの声と姿を見てがくぜんとする。
封印した記憶がよみがえる。過酷で悲惨な戦時下、恐怖におびえながらも熱く燃え上がった愛と悲しい別離。運命の渦に巻き込まれ、抱きしめていたものを手放した時、取り戻すことができない時間のなんと残酷なものか。過去を忘れるために夫や娘と積み重ねてきた現在の幸せがわずかに揺らぐ。ハンナに真の安らぎは訪れるのだろうか。
過去と現在を交錯させながら、実話を元に描かれる映像は情念を刺激してやるせなさが募る。切なさに胸が痛くなる極上のラブストーリーだ。監督はドイツ生まれのアンナ・ジャスティス。(2012年12月13日・杉尾久)