東京家族
山田洋次監督集大成の作品
1953年に公開された小津安二郎監督の「東京物語」は国内のみならず、海外でも高い評価を受けた、映画史に残る名作だ。その「東京物語」をモチーフにして、「男はつらいよ」シリーズなどで日本を代表する監督の山田洋次が家族の絆と喪失、夫婦と親子、老いや死についての映画を作った。
瀬戸内海の島で暮らす平山周吉・とみこ夫婦は子供たちに会うために上京する。都会では子供たちそれぞれの事情に巻き込まれ、失意のまま帰郷を余儀なくされてしまう。この映画は小津の物語の単なるリメークではなく、山田洋次独自の世界観で描かれた現代日本の家族の風景であり、彼自身の映画の集大成とも言える作品になった。
夫婦を演じる橋爪功と吉行和子の人間味あふれる演技と、次男の恋人役蒼井優の好感の持てるキャラクターが秀抜だ。吉行和子と蒼井優が信頼関係を結ぶシーンは本作の白眉だった。(2013年2月7日・笹原)