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シネマ1987online

愛、アムール

新鮮な構成と愛で迫る傑作

カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)に続き、米アカデミー賞外国語映画賞を受賞したミヒャエル・ハネケの話題作。

音楽家夫婦のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リバ)は老後を悠々自適に過ごしていたが、悲劇が襲う。妻のアンヌが病に倒れ、手術も失敗し半身不随となったのだ。入院を嫌う妻に夫ジョルジュは自宅で献身的に介護するが、アンヌは心を閉ざしていく。夫は最愛の妻のために重大な行動を取る。

当年83歳の「男と女」の男優と86歳の「二十四時間の情事」の女優が名演。駄々をこね、水を飲むのを拒む妻に夫が平手打ちした後、わびる場面が心を打つ。

老老介護を描いた本作には、これまで冷たい視線の作品が多かったハネケ監督とは思えないほどぬくもりがある。後半の映画文法を逸脱したような構成も新鮮だ。誰しも避けられない老いと死に、愛で迫った圧巻の傑作である。(2013年4月18日・小野)

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