It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

みなさん、さようなら

新たな「生」へ 濱田岳が好演

1960年、真新しい団地が完成した。「ヨーロッパの街並み」とうたわれ、アーケードの商店街には何でもそろっていた。1981年、小学校の団地の卒業生は107人いたが、1人また1人といなくなっていく。そんな中、12歳の渡会悟(濱田岳)は「団地の中だけで生きていく」と宣言し、ひ弱ながら自分で体を鍛えて団地を守り住み続ける。時は流れ1996年、義父に家庭内暴力をふるわれているブラジル人の少女と遭遇する。

久保寺健彦の小説の映画化で、監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」の中村義洋。濱田岳とは早くも5度目のコンビで、いかに監督がこの俳優を好きかが分かる。少女の義父と対決する場面など、こんなかっこいい濱田岳は見たことがない。

濱田が心の傷を克服し新たな「生」へ向かおうとする主人公を好演。コミュニティーと個人の問題もはらんだドラマを親近感あるものにした監督と主演者に拍手したい傑作だ。(2013年4月4日・小野)

TOP