草原の椅子
大自然の中で新しい人生へ
芥川賞作家・宮本輝の同名原作を「八日目の蝉」の成島出監督が演出。
カメラメーカーに勤める遠間(佐藤浩市)、カメラ店社長・富樫(西村雅彦)、陶器店経営の貴志子(吉瀬美智子)の3人はふとしたことで知り合い、交流を深めていた。ある日、遠間は両親に捨てられた少年と出会う。少年と関わる中で、彼らはそれぞれに抱えていた寂しさや苦しみと向き合うことになる。3人は新しい人生に踏み出すきっかけにしようと、少年を連れ、知人が撮った写真で知ったパキスタンのフンザへと旅立つ。
都会に暮らす彼らはつらい現実を前にして自らを見詰め直そうと雄大な自然の中に立ってみる。その大きさに気付いた時、心に生まれたものはただ生への感謝の気持ちだった。タイトルは自分の居場所、自分を包みこんでくれる場所、それらを広い草原に置かれた椅子に例えたのだろう。人と人との出会いが生む喜びや葛藤、希望に向かう姿を描いた秀作。(2013年3月7日・手塚)