キャプテン・フィリップス
乗員救うため海賊の人質に
ソマリア沖で実際に起きたコンテナ船アラバマ号襲撃事件に基づく映画である。
乗組員は船長のフィリップス以下20人。どこかのどかな乗組員らの油断がわずか4人のソマリア人に襲撃を許すことになる。やせ細った海賊たちはコンテナ船の必死の振りほどき作戦にもひるむことなく、銃を片手にあっという間に船に乗り込んでくる。息もつけないシーンだ。彼らはカタコトの英語で金を出せとわめき散らす。教養もなく飢えて育ったまだ若い彼らは、ボスに命令通りの働きを要求されていた。
「ユナイテッド93」で脚光を浴びたポール・グリーングラス監督は善と悪、二分の描き方ではなく、ソマリア情勢にも目を向ける。救助の米軍と海賊とのやり取りは荒波の中で実にスリリングだ。自ら人質となり、乗組員を救うため極限の努力をする船長にトム・ハンクス。高い演技力は次期アカデミー賞の呼び声も高い。(2013年12月19日・林田)