ホーリー・モーターズ
カラックス監督 13年ぶりの新作
フランス映画界の鬼才、レオス・カラックスが「ポーラX」以来13年ぶりに撮った新作。「ポンヌフの恋人」などアレックス3部作のドニ・ラヴァンが主演している。
ある朝、豪邸で暮らす銀行家のオスカー(ドニ・ラヴァン)は白いリムジンに乗り仕事へ出掛ける。車内で変装し、降りたときはみすぼらしい女になっていた。その後も車に戻っては、さまざまな人物に次々と変身し、深夜までパリの街中を徘徊(はいかい)する。
奇妙きてれつな映画である。話が込み入っているわけではない。伊福部昭の音楽で主人公が怪人姿で暴れ回る場面は「ゴジラ」を、チンパンジー登場の一場は「マックス、モン・アムール」を思い起こさせる。全編が映画へのオマージュとなっているのも明らかだ。
ラヴァンを役者として幾通りもの生き方をさせ、その肉体による動きを賛美する。それを映画に連動させている。したたかな怪作にして快作だ。(2013年10月3日・小野)