中学生円山
変な個性発揮 真摯な命題も
朝の連続テレビ小説「あまちゃん」も好評の脚本家、宮藤官九郎の映画監督第3作である。
円山克也(平岡拓真)は父母と妹の4人家族で団地に暮らす中学生。だが彼はある目的のために身体を柔軟にする「自主トレ」に励んでいた。そんな時、上の階に怪しいシングルファーザーの下井(草彅剛)が引っ越してくる。程なく殺人事件が起こり、克也は下井と事件との関係を妄想し始める。
主人公の自主トレのエッチな目的にまずあきれる。そして自分がいないところでは家族が宇宙人なのではと思ったり、上の階の住人が子連れ狼的殺人者ではと疑ったり。円山君が「妄想」を広げていくところはシュールだ。監督がテレビでは抑え気味の変てこな個性が十分に発揮されている。それでいて作中では「人はなぜ人を殺してはいけないのか」という真摯な命題も問い掛ける。一筋縄ではいかないコメディーの異色作である。(2013年5月30日・小野)