It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

利休にたずねよ

型を重んじる演技に説得力 

雨の降りしきる朝、兵に取り囲まれた屋敷で茶人、千利休(市川海老蔵)は豊臣秀吉(大森南朋)の命により切腹しようとしていた。死に向かう利休に妻の宗恩(中谷美紀)は「あなたさまにはずっと思い人がいらっしゃったのでは」と問いかける。宗恩の一言が利休の心のうちに秘められた記憶を呼び戻していく。

山本兼一の直木賞受賞作の映画化。「美はわたくしが決めること」とうそぶく利休が容器に水を張って月の姿を映し、織田信長(伊勢谷友介)から大金のほうびをもらう序盤からひきつけられる。利休が大事にし続けた小つぼを巡るミステリータッチの語りも巧みだ。

これまでこの役は幾多の名優が演じてきたが、海老蔵利休も型を重んじる歌舞伎俳優らしく演技に説得力がある。美の追求者の主人公らしいつやもあって素晴らしい。

監督は「火天の城」の田中光敏。利休が実際に使った器を用いた本物感覚も見事な秀作である。(2013年12月26日・小野)

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