舟を編む
言葉の繊細さ 穏やかに表現
私たちが何の疑問もなく使っている「言葉」。この作品は20年近くかけて作られる1冊の辞書をめぐる物語で、2012年の本屋大賞を受賞した三浦しをんの原作を「川の底からこんにちは」の石井裕也が監督した。
玄武書房の辞書部門では定年退職する編集者の荒木(小林薫)の後釜を探していた。「右という言葉を説明してみろ」という荒木のテストに合格した馬締(松田龍平)は日本語研究者の松本(加藤剛)を中心に、言葉の海を渡る船、辞書「大渡海」の編集に取り掛かる。人とうまく関われず、周囲から浮いた存在だった馬締は辞書編集をきっかけに自分の居場所を見つけるのだった。
言葉は自分の思いを伝えるためのものだが、言葉がそれに追いつくことはないだろう。だが、言葉を懸命に探し、見つけ出す喜びは計り知れない。この作品は日本語の繊細さ、深さ、感情の奥深さ、人との縁の不思議を穏やかに感じさせてくれる。(2013年5月2日・手塚)