はじまりのみち
木下監督への思いあふれる
木下恵介監督の生誕100年記念作品。「河童のクゥと夏休み」や「クレヨンしんちゃん」シリーズなどアニメーションの傑作で知られる原恵一監督が、実話をもとに初の実写映画に挑んだ。
第2次大戦中、木下恵介(加瀬亮)は監督4作目の映画「陸軍」が「戦意高揚にならない」として次回作の製作を中止される。木下は松竹に辞表を提出、浜松市の実家に帰る。浜松でも空襲は激しく、寝たきりの母親(田中裕子)を疎開させるため、木下は兄(ユースケ・サンタマリア)と便利屋(濱田岳)の3人で母を乗せたリヤカーを引き、山奥の村へ向かう。
木下の映画「陸軍」への思いや葛藤が描かれ、戦後の作品のヒントとなるエピソードも出てくる。ラストには「二十四の瞳」や「カルメン故郷に帰る」「喜びも悲しみも幾歳月」「楢山節考」など木下作品の名場面が紹介される。木下監督のファンという原監督の木下作品への思いが詰まった映画である。(2013年6月20日・加賀正)