小さいおうち
山田監督新作 名人芸の表現
山田洋次監督の最新作。これまで山田監督は喜劇、時代劇、ファミリードラマを撮ってきたが、今回の作品は純粋なラブストーリーだ。
昭和11年、山形から東京へと奉公をするために出てきたタキ(黒木華)は、東京郊外に赤い三角屋根の小さくてモダンな屋敷を構える平井家で働くことになる。平井家では玩具会社の重役・雅樹(片岡孝太郎)とその若い妻・時子(松たか子)、一人息子の恭一が暮らしていた。タキは彼らと満ち足りた生活を送っていたが、雅樹の部下で美術学校出身の板倉(吉岡秀隆)が現れて、時子の心が揺れているのに気づく。
原作は直木賞を受賞した中島京子の小説。山田監督は戦前の庶民の生活を描きながら、時子、板倉そしてタキの心の動きを機敏に映像で表現している。まさに名人芸だ。監督はこのはかないラブストーリーを通じて、彼なりに戦前という時代を表現したかったのではないだろうか。(2014年2月20日・酒井)