ある過去の行方
別れを決めた男女のドラマ
今はイランとパリに別れて暮らしているが 2人は離婚調停のため5年ぶりに再会した夫婦。中学生と小学生の娘は妻が育てている。土砂降りの空港に降り立った男と、迎えに行った女は口数は少ないが、夫婦の気持ちがまったく切れてしまったわけではなさそうである。別れると決めた男女に残された小さな執着は愛情と言えるのだろうか。妻には新しい男ができている。その男にも5歳の男の子がいる。
要は別れると決めた男女が、周りの人々や家族を巻き込んでサスペンス風に展開していくドラマだ。移民や宗教といった問題には直接触れていない。そしてラストは観客に謎を投げかけたまま終わる。
前作「別離」でアカデミー外国語映画賞を受賞したイランの鬼才アスガー・ファルハディ監督の思惑をどう解釈すべきか? 主演は本年度のカンヌ映画祭で女優賞に輝いたベレニス・ベジョ。子役も含め全出演者の演技が素晴らしい。(2014年6月5日・林田)