大いなる沈黙へ　グランド・シャルトルーズ修道院

厳しい戒律の日常を淡々と

一人の修道士がほの暗い独房で祈っている。ナレーションや音楽なし、自然光のみで淡々とその日常を撮り続ける169分。1984年に撮影を申し込み、16年後に承諾、厳しい戒律で知られるグランド・シャルトルーズ修道院に初めてドキュメンタリーのカメラが入った。フィリップ・グレーニング監督は６カ月間を修道士と共に過ごす。

圧倒的な静寂、わずかな生活音や自然界が発する音のみ存在する。光と影の画面は美しい中世の絵画を鑑賞しているようだ。規則に沿った務めと禁欲、祈りの日々を繰り返す修道士たち。観客も現実の喧騒（けんそう）を忘れ、意識は異空間へ引き込まれる。

俗世を離れ、独房で祈る修道士は満ちたりて穏やかに見える。神に近づくことを最高の喜びとし、信仰に生きる姿は社会のわいざつな時間に追われ、疲れ果てた私たちに立ち止まることを促しているようだ。（2014年11月13日・杉尾久）