紙の月
大胆な脚色で屈指の秀作に
直木賞作家、角田光代のベストセラー小説の映画化。東京国際映画祭で宮沢りえが最優秀女優賞を受賞した。
バブル崩壊後の1994年、銀行の契約社員として外勤をこなす梅澤梨花(宮沢りえ)は丁寧な仕事で評判を得ていた。だが家庭では夫との暮らしに空虚感を抱いていた。そんな時、年下の大学生光太(池松壮亮)と出会う。一緒の時間を過ごすうち、梨花は顧客の金に手をつけ、光太に貢ぎ始める。最初は1万円だったが、金銭感覚がゆがみ、巨額の横領事件に発展。横領が発覚した彼女は一体どうするのか。
宮沢りえが心に空隙(くうげき)を抱える主人公を名演。事務員隅役の小林聡美も好助演。盗んだ金で「愛」をささげ、自らも得ようとした梨花が手を伸ばした月は、かりそめの「紙の月」だった。梨花が窓ガラスをたたき割る後半の大胆な脚色に驚くが、吉田大八監督の演出の力量を見せつけられた。本年屈指の秀作だ。(2014年12月4日・小野)