野のなななのか
生と死の交流 悲劇の記憶へ
野の大師たちのファンタジックな楽隊の演奏シーンから引き付けられる大林宣彦監督の新作。
冬の北海道、芦別市で一風変わった古物商を営む元病院長の鈴木光男(品川徹)が92歳で他界する。散り散りになっていた鈴木家の人々が葬儀のため古里に戻ってくる。彼らの中に謎の女・清水信子(常盤貴子)がいた。突然現れては消える信子により徐々に光男の過去が明らかになる。1945年8月15日以降も戦争が続いていた樺太(からふと)で光男にいったい何があったのか。
「なななのか」とは四十九日のこと。生と死の境が曖昧なこの期間に生者と死者がさまよい、幽冥の境地が家族や古里、数々の惨劇の記憶につながっていく。
北日本では8月15日以降も9月5日までソ連軍との戦いがあった。その事実と東日本大震災における福島原発事故の悲劇を風化させてはならない。ファンタジーの糖衣に重たいものを包み込んだ171分の力作だ。(2014年7月17日・小野)