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シネマ1987online

おかあさんの木

息子を戦地へ 母親の悲しみ

日本が戦争をしていた頃、小さな村に住むミツは戦場へ息子を送り出すたびにキリの木を植え、その木を息子だと思い育てて帰りを待った。戦争は続き、キリの木はいつしか息子の数と同じ7本になった。にぎやかだったミツの家に子どもはもう誰も残ってはいない。

大川悦生の児童文学を、「がんばっていきまっしょい」の磯村一路監督が映画化、不条理な時代に正しく生きようとした市井の人々の姿を描く。主演は鈴木京香、その息子に思いを寄せる少女に志田未来、物語の語り手に奈良岡朋子など演技派俳優が出演している。

戦争へ突き進んだ大正から昭和の日本。それは政府や軍隊だけが引き起こしたことではなく、社会全体、その時代に生きた全ての人々が招いたこと。息子たちを戦地へ送り、時代に流された母親の悲しみは大切な人や家族と笑い合える時間の優しさを気付かせてくれる。この時代から70年しかたっていないことを忘れてはいけない。(2015年6月11日・手塚)

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