ヴィンセントが教えてくれたこと
チョイ悪男と少年との交流
俳優ビル・マーレイの個性が十分に発揮されたヒューマン・コメディーである。
酒とギャンブルに浸り切っている気難し屋のヴィンセント(ビル・マーレイ)。ある日、隣に母子が引っ越してくる。ヴィンセントは仕事で遅くなる母親から12歳の息子オリバー(ジェイデン・リーベラー)の子守を頼まれる。渋々引き受けたものの、オリバーを飲み屋や競馬場に連れて行ったり、けんかの仕方を教えたり。ろくでもないことばかり教えていく。
原題は「聖ヴィンセント」。ろくでなしの中年男が本当は心の優しい聖人のような人物であることを示している。ヴィンセントの真の姿に気付いた少年が周囲にもそのことを気付かせようとする場面が心を打つ。ヴィンセントも少年との交流で活力を取り戻していく。監督はセオドア・メルフィ。ビル・マーレイのチョイ悪おやじ版「グラン・トリノ」と言いたい傑作だ。(2015年12月3日・小野)