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シネマ1987online

母と暮せば

原爆で死んだ息子と母の絆

原爆投下後の広島を舞台にした井上ひさし原作の「父と暮せば」を受けて、山田洋次が脚本、監督した。

原爆が投下されて3年後の長崎。原爆で息子浩二を亡くした福原伸子は戦後の苦しい生活の中でようやく浩二の死を受け入れようとしていた。そんな時、伸子のもとに死んだ浩二が姿を現す。

伸子と浩二の会話を通して、原爆投下前後の母子の生活や浩二の生前の学生生活、恋人との様子などが明らかにされていく。山田監督は2人の会話や伸子の生活を丁寧に描くことで戦争について考える作品に仕上げた。

初共演となった吉永小百合と二宮和也は母と子の絆をうまく演じ、恋人役の黒木華ら助演の俳優も時代の雰囲気を表していた。坂本龍一が作曲した音楽は穏やかな映画の雰囲気と見事に合っている。

原爆投下の映像は静かな中に原爆の怖さを表現している。終戦70年の今年、見ておきたい映画の1本だ。(2015年12月17日・金川)

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