毛皮のヴィーナス
官能的な演技 不思議な感覚
舞台「毛皮を着たヴィーナス」のオーディション会場に遅れてやって来た年増の女ワンダ。脚本・演出家のトマはワンダを追い返そうとするが、彼女は勝手に強引に演じ始める。
最初は監督にこびていたワンダだが、強烈な個性でいつの間にか主導権を握る。トマはなぜか彼女の言いなりになって行く。立場が逆転した2人は女王と奴隷のような妖しくも甘美な世界へと踏み込んで行く。
初めからラストまで出演者はワンダとトマの2人きり。まるで舞台劇を見ているような錯覚に陥る。監督は「戦場のピアニスト」でアカデミー監督賞に輝いた鬼才ロマン・ポランスキー。迫力ある魅力のワンダにはポランスキー監督の妻であるエマニュエル・セニエ。トマにはこれまた性格俳優で演技派のマチュー・アマルリック。
2人のマゾヒズムを思わせる官能的な演技に心を奪われてしまう不思議な感覚の作品である。(2015年2月5日・林田)