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孤独な男女の出会いと再生
東京に妻子を残して単身赴任している裁判所判事の鷲田完治(佐藤浩市)は偶然、学生時代の恋人・結城冴子(尾野真千子)と法廷で再会する。彼女は覚せい剤事件の被告だった。完治は冴子との関係をよみがえらせるが、彼女は完治の目の前で自殺してしまう。
妻子と別れた完治は判事を辞め、釧路で国選弁護専門の弁護士として25年間、ひっそりと暮らしていた。ある日、覚せい剤所持で逮捕された椎名敦子(本田翼)という若い女性の弁護を担当する。家族に見放され、誰にも頼ることなく生きてきた敦子の存在はかたくなな完治の心を少しずつ溶かしていく。敦子も完治との出会いにより、自分の生きる道を見いだす。
原作は桜木紫乃の短編。監督は「小川の辺」の篠原哲雄。佐藤の渋い演技に、天真らんまんな本田が美しく魅力的だ。驚くような展開はなく、地味な作品だが、見終わった後、少し幸せな気分にさせてくれる。(2015年11月26日・酒井)