マジック・イン・ムーンライト
アレン監督の名人芸に酔う
ウディ・アレン監督の最新作で1920年代の南フランスが舞台である。
この世に魔法や超能力は存在しないと信じるイギリス人奇術師スタンリー(コリン・ファース)は友人から、ある大富豪が入れ込んでいるアメリカ人占い師の真贋(しんがん)を見抜いてほしいと依頼される。自信満々にコート・ダジュールの邸宅を訪れたスタンリーだったが、占い師ソフィ(エマ・ストーン)の透視能力に圧倒される。しかも容貌も性格も素晴らしいソフィのとりこになってしまう。
ミイラ取りがミイラになる。魔法など信じなかった男が落城してしまう。まさに恋の魔法をかけられたと言うべきか。主演の2人がエレガントに好演。20世紀初頭の時代設定と南フランスの風景もこのロマンチック・コメディーに生かされている。新味はないが、老舗の安定感を見せるアレン監督の名人芸に酔わされる一作だ。(2016年1月14日・小野)