サウルの息子
数々の映画賞獲得の話題作
1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所でナチスから特殊部隊ゾンダーコマンドに選抜されたハンガリー系ユダヤ人のサウル(ルーリグ・ゲーザ)は次々と到着する同胞たちをガス室へ送り込み、死体処理の仕事に就いていた。ある日、ガス室でまだ息のある少年を発見する。結局、亡くなったその少年をサウルは自分の息子と思い込み、ユダヤ教の教義にのっとった埋葬で弔いをしようと決意する。
昨年のカンヌ国際映画祭グランプリ、今年のアカデミー外国語映画賞など数々の賞を獲得した話題作。監督は本作が長編デビューとなるハンガリーのネメシュ・ラースロー。
映像はサウルをクローズアップすることによって、彼の周辺で起きていることを視覚としてほとんど見せず、語りもしない。しかし観客は想像力をかき立てることによって、この収容所で何が起こっているのかを確実に理解できる。素晴らしい演出だ。(2016年3月10日・酒井)