家族はつらいよ
小津映画への敬意あふれる
結婚50年を迎える平田周造(橋爪功)と妻の富子(吉行和子)。思い立って誕生日の贈り物をしようと周造が妻に要望を聞くと、富子の答えは「離婚届」だった。突然の父母の離婚話に子供たちは大慌て。解決策のために家族会議で離婚問題を話し合おうとするが、それぞれの言い分ばかり飛び出して四分五裂。周造一家はどうなるのか。
「東京家族」で一家を演じた俳優陣8人が再結集。見事な演技のアンサンブルで沸かしてくれる。山田喜劇ではギャグの豊富さも随一。「ディア・ドクター」で主役を演じた落語家が頼りない医者で登場の一幕もおかしい。富子が離婚を決意した理由から、家族として長年一緒にいても相手を個人と認め、時には言葉で思いを伝えることも大事かもと思わされる。小津映画への敬意にもあふれた滋味ある喜劇の傑作である。(2016年3月24日・小野公宇一)