恋人たち

丁寧に繊細に生きざま描く

橋点検の仕事をしているアツシ（篠原篤）は通り魔殺人事件で妻を失い、喪失感と罪の意識にさいなまれながら裁判のため奔走する。主婦の瞳子（成嶋瞳子）は、そりが合わないしゅうと夫との暮らしに心が揺れ動いていく。同性愛者でエリート弁護士の四ノ宮（池田良）は友人にひそかな思いを寄せているが、友人の妻の誤解のために苦しむことになる。映画はこの３つのストーリーを柱に進行していく。

監督は「ハッシュ！」「ぐるりのこと。」の名作を送り出した橋口亮輔。無名の俳優たちを起用しているが、それぞれ見事な演技で見る者をわしづかみにして離さない。橋口監督の演出も時にユーモアを交えながら、彼らの生きざまを丁寧にそして繊細に描いている。

監督はこの作品について「ささやかな希望をちりばめた。人の気持ちの積み重ねが、人を明日へつないでいくんじゃないか」と語っている。監督のこの思いが私たちに伝わるだろうか？（2016年1月21日・酒井）