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シネマ1987online

最愛の子

男児誘拐大胆な作劇で

中国・深圳の市街地で、ある日突然3歳の男児ポンポンが姿を消す。ティエン(ホアン・ボー)と妻は行方を必死に捜索し、3年後、村にいる息子を見つけ出す。だが息子は実の親のことを忘れ、育ての親のホンチン(ヴィッキー・チャオ)から離れたくないと激しく拒む。

実際に起きた誘拐事件の映画化だが、途中で映画の「主語」が誘拐の被害者のティエンから加害者のホンチンへ変わる大胆な作劇に驚かされる。映画はその後、被害者と加害者の両面から事件のありさまを描いていく。

中国の「一人っ子政策」も近年は高齢化社会の諸問題で見直されつつあるようだが、この政策のせいで後継ぎと労働力の点で男児の価値が高く、誘拐の被害者は愛児の死亡が証明されない限り2人目の子供をつくれないという事実をまざまざと見せつけられる。本作は中国が抱える「子」のあらゆる問題を取り込みながら、「家族」とは、「親子」の本当の情愛とは、を見る者に深く考えさせる。

監督は「君さえいれば 金糸玉葉」「ラヴソング」のピーター・チャン。本作の影響で、中国で刑法が改正された。さまざまに映画の力を思い知らされる力作だ。(2016年4月21日・小野)

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