ライチ☆光クラブ
いちずな思いが悲劇へ
工場の並ぶ油まみれの町、蛍光町。その廃虚ではタミヤ(野村周平)ら仲良しの9人の少年たちが「光クラブ」という秘密結社をつくっていた。今はカリスマ性のあるゼラ(古川雄輝)が醜い大人を否定し、厳しい戒律で他の8人を従えていた。そんなある日、クラブで開発され楊貴妃(ようきひ)の好んだ果実から名付けられたロボットの「ライチ」が、永遠の美の象徴として少女カノン(中条あやみ)を捕らえてくる。少女への恋愛感情を巡りメンバーの関係が崩壊していく。
劇団「東京グランギニョル」が発表した舞台劇を古屋兎丸が漫画化したものを映画化した作品。中心にあるアイデアは「フランケンシュタイン」か「美女と野獣」かといったところだが、ジャン=ピエール・ジュネや、ルキノ・ビスコンティの後期の作品をほうふつさせる。退廃的な美術とボーイズラブ的要素が印象的で、少年たちの「ピーターパン症候群」的な面を見せながら、純粋でいちずな思いが時に方向性を誤らせる悲劇をイメージ豊かに描き出している。監督は「先生を流産させる会」「パズル」の内藤瑛亮。映画としての完成度はともかくも、見たあと心に残る。そんな映画もあっていいのではと思える問題作である。(2016年5月5日・小野)