リリーのすべて
愛の姿 美しく切なく
1926年、コペンハーゲンの風景画家アイナー・ヴェイナーは妻ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を務める。その時からアイナーは自分の中に潜んでいた女性の存在を自覚するようになる。アイナーはリリーという名の女性として過ごす時間が増え、心と体が一致しない自分に苦悩を深めていく。ゲルダは夫が夫でなくなっていく事態に戸惑うが、やがて彼を理解するようになる。彼らは移住先のパリで、ドレスデンの婦人科医を紹介され、世界初の性別適合手術を受けることになる。
監督は「英国王のスピーチ」でアカデミー監督賞を受賞したトム・フーパー。主演のアイナー・ヴェイナーを「博士と彼女のセオリー」でアカデミー主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインが演じている。一番の理解者で夫を支え続ける妻を演じたのは「コードネーム U.N.C.L.E.」のアリシア・ヴィキャンデル。この作品の演技でアカデミー助演女優賞に輝いた。 自分の中にリリーを見いだすことで自分を取り戻していくアイナーと夫を失っていくゲルダの姿を映画は美しくも切なく描く。人を愛するとはどういうことなのかを考えさせられる愛の名作だ。(2016年5月19日・酒井)